<--------シーン1-----------------------------------------------------------------------------------------------------Ver.112----------------------------------> マイ こんにちはー。 ごめんくださーい。 ヒロ兄ちゃん、出てきてよー。 雪降ってるよ。 ヒロ お、本当だ。 もうこんなに積もってるし。 ん。 スキ有り! マイ ひゃあ、つめたい。 あーっ。 ヒロ兄ちゃんのいじわる。 もうっ。 仕返しだー。 くらえーー。 ヒロ つめてーー! なんだよ、頭からかけんなよ。 そんな悪い子にしてると、今晩、マイちゃんの家にはサンタ来ないぜぇ。 マイ え。 それ困る。 マイはいい子だよっ。 ヒロ やれやれ。 それにしても、サンタクロース、まだ信じてるのかぁ? 子供だなあ。 マイ ふんだ。 また子供扱いして。 ヒロ兄ちゃんだって、あたしより4つ年上なだけじゃない。 とにかくっ、サンタはいるんだよっ。 ヒロ あははは、なに言ってんだよう。 マイ サンタはいるのっ。 絶対にいるんだからぁ。 ヒロ え。 あ、あ、そうだね。 マイ なに? ヒロ あ。 まあ、いるかもね。 あ、そうそう、そういや、去年見たの思い出した。 コンビニの入り口で、寒いのにケーキ売ってた。 マイちゃん、君は正しいっ。 マイ それは、大学生のお姉さんがお仕事でやってるの。 あたしだって、そんくらい知ってるんだから。 ヒロ ごめんごめん、ジョーク。 ジョーク。 いる、いるね。 うん確かにいる。 みんなから頼まれたものをいっぱい積んで。 マイ そうそう。 ヒロ はるばる来るんだ。 マイ うんうん。 ヒロ オートバイに乗って。 マイ え? ソリに乗って、でしょ? ヒロ まあ聞け。 重要なのは出発してから15分以内に到着するって事だ。 そうしないと、 せっかくの商品が冷めてしまい、客からのクレームが殺到してしまう。 マイ それは、ピザ屋さん! サンタの格好してるけど、サンタじゃないっ。 ヒロ ごめんごめん。 本物もいるさ。 わかってる。 マイ 本当にいると思ってるの? ヒロ ああ。 いるいる。 それはともかく、あっち、行ってみようぜ。 <--------シーン2----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------> マイ 雪、きれいだね。 落ちてくる、ひとつひとつ、みんな違う形してるよね。 ヒロ ああ。 そうだな。 マイ ねえ、知ってる? ヒロ なんだよ。 マイ 落ちてくる雪がね。 ずーっと見てるとね。 すごくたまにだけどね。 2つが途中でくっつくことがあるの。 ヒロ ふ〜ん。 マイ その雪が、地面に落ちる前に、好きな人の名をとなえると、 その人といつまでも一緒にいられるんだって。 ヒロ そ〜かあ? そもそも、雪がくっつくことなんてあるのかぁ? マイ いい話でしょ。 ヒロ ああ。 いい話だね。 ま、そんなことより腹へった。 ああ、だんごが食いたい。 マイ あっ。 ヒロ えっ? マイ くっついたんだよ。 今! ヒロ兄ちゃんが、だんごって言ったときに。 ……ふ、ふ、ふ、ふ、は、は、は、あはははは。 ヒロ兄ちゃんのフィアンセ、だんごだぁ〜。 ヒロ だんごか……。ま、それでも、マイちゃんよりはマシだ。 マイ もうっ。 ばかー。 ヒロ イテッ! 叩くなっ! <--------シーン3----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------> ヒロ っと、あれから、もう10年。 今日、オレは大学を卒業する。 そして、あのマイも、高校を卒業して、一緒に社会人になっちまう……らしい。 あ、来た来た。 マイ 先輩! ヒロ よお。 マイ あたしのほうはもう全部終わったから、雨上がったし、来ちゃいました。 お。 先輩、ブレザー姿、決まってますね! 真っ赤なネクタイも最高です。 ヒロ マイも、紺の制服がまぶしいぜ。 それに、髪型、変えたのか? ご自慢の長い髪はどこいった? マイ ここ。 ここ。 ここです。 ヒロ なんだ、まとめて固めたのか。 おっ。 こ、こ、この髪型は。 マイ なんですかぁ? ヒロ もしや、オレのために。 そうかあ。 そうなんだ。 そんなにも。 だんごになりすまして、意思表示なんて、洒落てるじゃないか。 それに、なんていじらしい。 すまん。 もうちょっと待ってくれ。 オレにも心の準備が必要だ。 マイ 何、ぶつぶつ言ってるんですかぁ? ヒロ 覚えていてくれたんだろ。 あの雪の日のこと。 マイ 雪? ヒロ ああ、雪の日。 いやいや、別に、なんでもないよ……。 マイ 先輩。 あの角まで、一緒に歩いていいですか。 ヒロ ああ、歩こうか。 <--------シーン4----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------> マイ 先輩も、4月から社会人なんですね。 ヒロ ああ、どうにかな。 お互い、人生の新しい一歩を踏み出すってやつだ。 マイ こうやって歩いてると、何もかも、輝いて見えますね。 先輩のブレザーの金ボタンも、緑の葉っぱの上に残った雨粒も、みんなキラキラ。 雨上がりの桜並木、ん〜〜 気持ちいいなっ。 ヒロ 随分と大人っぽいことを言うようになったもんだな。 あれ、その手、何にぎってんだ? マイ 桜吹雪、くらえーー。 ヒロ なんだーー? 頭からかけやがって。 マイ 先輩!卒業、おめでとうございます!